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訪問歯科診療 公開日:2026/04/08

【第1回】訪問歯科診療と介護保険|居宅療養管理指導を算定しないことによる「3つの損失」とは?

【第1回】訪問歯科診療と介護保険|居宅療養管理指導を算定しないことによる「3つの損失」とは?

こんにちは。デンタルサポート訪問サポート担当の野田です。
私は地方エリアでの現場サポートや訪問先営業など、訪問歯科診療の支援業務全般に携わっています。
訪問歯科診療に関するお悩みから問題点を分析し、課題解決のヒントをお伝えします。

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院長先生、訪問歯科診療の「介護保険算定」で、こんなお悩みはありませんか?

  • 「介護保険の算定が、正直よくわからない」
  • 「居宅療養管理指導が算定できるのは知っているが、実際に何をすれば算定できるのかわからない」
  • 「介護保険は手続きが面倒そうなので、とりあえず医療保険だけで対応している」

訪問歯科診療を行なっている、あるいは、これから始めようとしている院長先生から、こうした声をよく聞きます。
しかし、居宅療養管理指導を理解していない影響は、収益の機会損失にとどまりません。ケアマネジャーとの接点が生まれにくくなるうえ、患者家族とのトラブルも起きやすくなります。

本コラムは、訪問歯科診療における「介護保険の算定」「多職種連携」をテーマにした全3回の連載です。第1回となる今回は、「居宅療養管理指導」を算定しない場合に生じる3つの損失を整理します。

連載目次
訪問歯科診療と介護保険 算定完全ガイド【全3回】

居宅療養管理指導が算定されていない背景

算定していない理由は、ひとつではありません。よく聞かれるのは、次のような状況です。

状況1:訪問診療と往診の違いが曖昧なまま運営している

「往診」は患者様やご家族からの求めに応じて緊急・臨時に行うものです。
一方、「訪問診療」は定期的に訪問して行うものです。訪問歯科診療では、事前に管理計画書を作成し、患者様やご家族の同意を得たうえで実施します。そのため、単発の対応ではなく、継続的な口腔管理を行う診療形態になります。
この区別が曖昧なまま運営していると、訪問歯科診療の運用自体が成り立ちません。

状況2:居宅療養管理指導の算定条件がわからず、医療保険のみで対応している

要介護認定を受けている患者様への訪問歯科診療では、医療保険に加えて介護保険(居宅療養管理指導費)も算定できます。
しかし、居宅療養管理指導を算定せず、医療保険のみの対応にとどまっている歯科医院が多くあります。

居宅療養管理指導を算定しない場合に起こる3つの損失

損失1:本来得られるはずの収益を、毎月取りこぼしている

居宅療養管理指導が算定できるのは、要介護認定を受けている患者に限られます。要介護認定を受けていない方は対象外です。
単位数は、同一建物内の対象患者数によって異なります。

居宅療養管理指導を算定すると、歯科医師・歯科衛生士の訪問によって月最大2,482単位を算定できます(同一建物内の対象患者が1人の場合)。
この条件の患者様が5名いれば、月最大12,410単位を算定でき、年間では約149万円相当の収益になります。

医療保険のみで対応すると、この収益機会を毎月逃し続けることになります。

※厚生労働省「令和6年度介護報酬改定」をもとに作成。

■関連コラム:歯科訪問診療における介護保険算定(居宅療養管理指導)について

損失2:ケアマネジャーとの接点がなく、紹介機会を逃している

医療保険のみで対応している場合、広報活動以外でケアマネジャーと接点を持ちにくくなります。その結果、医院を認知してもらい、紹介につなげることが非常に難しくなります。
一方、居宅療養管理指導を算定する場合は、ケアマネジャーへ診療情報提供書を毎回交付する必要があります。これは算定上の義務であると同時に、定期的に接点を持つ機会でもあります。

損失3:患者様・ご家族・ケアマネジャーの信用を失う

居宅療養管理指導への理解不足は、患者様やご家族、ケアマネジャーとのトラブルにつながることがあります。なかでも手続きや費用に関するものが多く、以下のような事例が報告されています。

よくあるトラブル事例
  • 事例1|「よくわからない契約書が届いた」
    訪問歯科診療では、診療への同意や介護に関する手続きなど、さまざまな書類へのご記入が必要です。しかし、事前にご説明をせずに診療同意書・介護契約書だけをお送りすると、患者様やご家族が不安を感じ、「これは何の書類なのか」というお問い合わせ(クレーム)をいただくことがあります。
  • 事例2|費用の事前説明がなく、請求時にトラブルになった
    「歯医者さんに来てもらっているだけなのに、なぜ介護保険からも請求されるのですか」という問い合わせ(クレーム)は、医療保険と介護保険の両方で費用が発生することを事前に説明していない場合に、起こりやすくなります。
  • 事例3|ケアマネジャーが、居宅療養管理指導について誤解していた
    居宅療養管理指導はケアプランの対象外です。通常、介護保険サービスは、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて提供されます。そのため、「訪問歯科診療もケアプランへの記載が必要」と誤解されることがあります。ですが、歯科医院が算定する居宅療養管理指導はこのルールの例外です。
    また、居宅療養管理指導は、介護保険の支給限度基準額の対象外です。そのため、他の介護サービスを満額利用していても、別枠で算定できます。

居宅療養管理指導が持つ意義

居宅療養管理指導は、収益や連携の面だけでなく、患者様のケアや支援、多職種連携という観点でも重要な役割を持っています。
歯科医師が継続して口腔管理を行うことで、患者様やご家族に安心感をもたらします。
さらに、歯科衛生士が生活の場で、歯みがき指導や嚥下指導、義歯の清掃などの専門的な口腔ケアやアドバイスを行うことで、患者様やご家族の状況に合わせた実践的な支援につながります。
また、ケアマネジャーに定期的に診療情報を提供することで、医師や薬剤師、管理栄養士などの専門職と連携し、患者様を支える体制を築くことができます。

まとめ

ここまで見てきたように、居宅療養管理指導を算定していないことは、収益面だけでなく、紹介機会や患者様・ご家族との信頼関係にも影響します。
算定を始めるにあたって、確認しておきたいポイントがあります。以下の項目で、自院の現状をチェックしてみましょう。

居宅療養管理指導|算定前のチェックリスト
  • □ 1|自院の指定状況(みなし指定か)
    保険医療機関は原則として介護保険事業者として自動的に指定されています(みなし指定)。ただし、みなし指定を辞退している場合は別途申請が必要です。不明な場合は、都道府県または市区町村の介護保険担当窓口に確認してください。
  • □ 2|対象患者の把握(要介護認定か)
    定期的に訪問している、または、訪問を検討している患者様のなかに、要介護認定を受けている在宅の方はいませんか。要介護認定を受けている場合は、居宅療養管理指導の算定が可能です。
  • □ 3|費用説明の体制(スタッフ間で共有できているか)
    初回訪問前に、患者様やご家族へ「医療保険と介護保険の両方から費用が発生すること」を伝えられる体制がありますか。スタッフ全員が説明できる状態になっているかどうかも確認ポイントです。
これらが確認できたら、具体的な運用の検討に進むことができます。

※介護保険制度や関連する報酬は定期的に改定されます。実際の運用にあたっては必ず最新の公式情報をご確認ください。

第2回では、今回整理した課題を踏まえ、居宅療養管理指導の運用体制をどのように整えるべきかを解説します。

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そうお感じの院長先生も多いのではないでしょうか。最適な進め方は、医院の規模・地域性・スタッフの状況によって異なります。

当社では、訪問歯科診療の算定・連携体制について無料相談(初回)を承っています。貴院の状況を丁寧にうかがい、課題となるポイントを整理します。どうぞお気軽にご相談ください。


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