Column
コラム
こんにちは。デンタルサポート訪問サポート担当の野田です。
私は地方エリアでの現場サポートや訪問先営業など、訪問歯科診療の支援業務全般に携わっています。
訪問歯科診療に関するお悩みから問題点を分析し、課題解決のヒントをお伝えします。
当社の訪問歯科診療に対する意識調査の結果(※1)によると、約8割の歯科医師が訪問歯科診療の将来性を認識していることがわかりました。
しかし、訪問診療の実績のある歯科医院は、全国で約2割(※2)となっています。
では、訪問歯科診療を導入するうえで大きな障壁となるものとは一体なんなのでしょうか。
今回は訪問歯科診療の導入を阻む課題を深堀し、その解決策をシリーズで解説します。
この記事は、第2回「訪問歯科診療の収益に関する不安」についてです。
※1「訪問歯科診療に関する意識調査」レポートの無料ダウンロードはこちら
※2 歯科訪問診療料の算定があった医療機関は15,160施設であり、初診料等の算定がある医療機関約62,000施設の約24%。
出典:中医協 総-3 5. 10.27.在宅(その4).歯科訪問診療の実施状況.PDF(参照2024-11-25)
目次
以下は私が相談を受けた歯科医院から寄せられた「訪問歯科科診療に対する不安や課題」を大きく5つにまとめたものです。
【訪問歯科診療を導入時の不安と課題】
この記事では、訪問歯科診療に関する知識を基に収益に対する不安の解決策をお伝えします。
私がサポートした歯科医院が訪問歯科診療に踏み出せない理由には、以下の不安がありました。
令和6年度診療報酬改定により、国は質の高い在宅医療を推進しています。
「地域包括ケアシステムにおける在宅医療」高齢になっても住み慣れた地域で生活を続けられるよう、居宅療養管理指導を含んだ連携が求められている。 また、「在宅歯科医療における連携の推進」では在宅等で療養を行っている患者に対し、関係者との連携体制の構築を通じて、質の高い在宅歯科医療の提供を推進しているため、歯科訪問診療1における20分未満の評価の見直しがされているとともに、歯科訪問診療2及び歯科訪問診療3について同一建物居住者に対して歯科訪問診療を実施する場合の区分の見直しがされている。
引用:厚生労働省保険局医療課,“令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】”.令和6年3月5日版.PDF.厚生労働省(参照2025-01-14)
つまり、国は住み慣れた地域での在宅療養を推進するため、医科・歯科・介護の連携が重要視しています。
したがって、訪問歯科診療を行う歯科医院にとっては、他科との連携を図る絶好のタイミングだといえます。
前項で説明した通り、居宅療養管理指導を含んだ連携が求められています。
居宅療養管理指導を含んだ連携とは、主治医やケアマネジャーなどと協力し、歯科医師や歯科衛生士が積極的に指導や助言を行うことです。
これにより、患者の生活の質を向上させることができます。
さらに、居宅療養管理指導を算定することで、歯科医院にもメリットがあります。
居宅療養管理指導は、自宅または居宅系施設の居住者が対象であり、介護保険で報酬を請求することができます。
訪問歯科診療を行う際には、介護保険の算定方法を理解することが重要です。
算定には訪問する人数と診療内容に応じた滞在時間の確保が必要です。
したがって、歯科医師が歯科衛生士を帯同して訪問することをおすすめしています。
訪問歯科診療の算定についてはこちら
【令和6年度(2024年)改定版】訪問歯科診療算定のポイント
しかしながら、訪問歯科診療を実施しているにもかかわらず、介護保険請求をしていない歯科医院は少なくありません。
では、居宅療養管理指導の算定の有無による差額が年間でどのくらいになるか試算してみましょう。
介護保険を算定 | 介護保険を算定せず | |
---|---|---|
医療保険 | ●歯科訪問診療2:310点 310点×月4回×9人=11160点 | ●歯科訪問診療2:310点 310点×月4回×9人=11160点 ●歯在管:200点 200点×月1回×9人=1800点 ●文書提供加算:10点 10点×月1回×9人=90点 ●訪衛指:算定不可 0点 |
介護保険 | ●歯科医師居宅療養管理指導:487単位 487単位×月2回×9人=8766点 ●歯科衛生士居宅療養管理指導:326単位 326単位×月4回×9人=11736点 | |
1カ月の合計 | 31662点 | 13050点 |
6カ月の合計 | 189972点 | 78300点 |
差 額 | -1,116,720円 |
この条件下で6ヶ月間の訪問を行った場合、居宅療養管理指導の算定の有無による差額は、約110万円も出てしまうことになります。
したがって、居宅、または居住系施設の患者様を診療する場合は「居宅療養管理指導」の算定を前提に考えます。
ただし、採算が取れるかどうかの判断は、歯科医院の目指す規模や周辺エリアの状況によって異なります。
訪問歯科診療において、診療日数や時間(曜日)の設定は大きな課題です。
外来診療の時間を削り、訪問診療の時間を確保することは、歯科医院の経営者として悩ましいところでしょう。
では、訪問歯科診療を実施している歯科医院ではどのように設定しているのでしょうか。
在宅療養支援歯科診療所では「外来診療時間内」が44.4%で最も多く、次いで「外来診療時間の前後、昼休み」が38.3%、「外来診療日以外」が13.0%であった。 一方、在宅療養支援歯科診療所以外の歯科医院では「外来診療時間の前後、昼休み」が44.0%で最も多く、次いで「外来診療時間内」が34.6%であった。
引用:中医協.”直近1年間に歯科訪問診療を最も多く実施した時間帯について”.在宅(その4).厚生労働省.PDF.p.36(参照2025-01-14)
在宅療養支援歯科診療所では、しっかりとした体制整備を行い、臨機応変に対応できる時間帯を確保しています。
これにより、多数の患者様を効率的、継続的に診療することができます。
在宅療養支援歯科診療所以外の歯科医院では、昼休みや診療前後での対応が多く、外来診療の時間を確保していることがわかります。
訪問歯科診療の導入初期の患者数が少ない時期は、このように外来診療に影響のない範囲で診療を行っていくことをおすすめします。
外来患者へのサービスの質を保ちながら、訪問歯科診療を少しずつ定着させることができるでしょう。
令和6年度の診療報酬改定により、在宅医療における連携が推進され、訪問歯科診療の需要は著しく増加しています。
現在は在宅医療に手厚い環境が整っていますので、これを機に訪問歯科診療を導入することを検討してみてはいかがでしょうか。
しかし、導入に際して収益面の不安を抱える歯科医院も多いことでしょう。
まず、歯科医院の体制を整え、訪問時間を確保することが重要です。
無理のない範囲で訪問歯科診療を始めるために、どの時間帯で訪問が可能かを把握し、計画的に進めましょう。
さらに、介護保険での算定方法や訪問歯科診療の基礎知識を身につけることで、訪問歯科診療のメリットをより実感していただけるはずです。
次回の記事は、第3回 その不安は解消できる!訪問歯科診療のはじめ方 業務負担の増加に関する不安(2025年2月12日公開予定)です。
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