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訪問歯科診療 公開日:2025/04/23

訪問歯科診療に潜むリスク「ヒヤリハット」って何?【トラブルになる前に!ヒヤリハット対策のススメ】

訪問歯科診療に潜むリスク「ヒヤリハット」って何?【トラブルになる前に!ヒヤリハット対策のススメ】

こんにちは。デンタルサポート 歯科事業部 萩原です。

「慣れない訪問診療で、患者様に迷惑をかけないか不安…」「想定外の事態に対応できるか自信がない…」訪問歯科診療を始めたばかりの先生なら、誰もがそんな不安を抱えるのではないでしょうか。
確かに、訪問診療では、外来診療とは異なる環境での診療や患者様一人ひとりに合わせた対応が求められます。
そこで、このコラムシリーズ【トラブルになる前に!ヒヤリハット対策のススメ】では、訪問歯科診療で起こりうるリスクや「ヒヤリハット」事例を取り上げ、具体的な対策方法を解説していきます。
第一回目は「訪問歯科診療に潜むリスク『ヒヤリハット』って何?」です。
まずは、訪問歯科診療特有のリスク要因を理解し、安全対策の第一歩を踏み出しましょう。

ヒヤリハットとハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則

皆さまは「ヒヤリハット」という言葉をご存じでしょうか?
ヒヤリハットとは、「実際には事故やトラブルには至らなかったが、一歩誤れば大きな問題に発展した可能性がある事例」を指します。
これは、医療現場において「予期しない事態の発生で危険を感じた瞬間」を示す指標として非常に重要です。
ハインリッヒの法則によると、「1件の重大な事故の背後には29件の軽度な事故と300件ものヒヤリハットが存在する」と言われています。
つまり、ヒヤリハットは重大な事故の兆候であり、軽視できません。
特に、訪問歯科診療は環境が変動しやすいため、ヒヤリハットを未然に防ぐためには、日頃からリスクを意識し、注意深く観察することが大切です。

ヒヤリハットの例
「診療中に患者様が転倒しそうになり、スタッフがとっさに支えて転倒を防いだ」ケースです。実際に事故は起きませんでしたが、この「ヒヤリ」とした経験は、重大な事故を防ぐための貴重な警告です。「大事に至らなかったから良かった…」と済ませるのではなく、危険信号だと捉えましょう。

ヒヤリハットに影響:訪問歯科診療と外来診療の違い

患者様の来院を前提とする外来診療に対し、歯科医師や歯科衛生士が患者様のもとへ赴くのが訪問歯科診療です。
訪問歯科診療と外来診療には、治療を行う場所や患者様との関わり方において大きな違いがあります。
ここでは、各項目ごとに訪問歯科診療で起こりうるヒヤリハットの要因を外来診療と比較しながら、項目ごとに解説します。

診療環境

訪問歯科診療では、環境の予測不可能性が高いため、予期せぬ事態が発生するリスクが高く、状況判断や臨機応変な対応が必要です。

訪問歯科診療 外来歯科診療
■環境は患者様のご自宅や施設ごとに異なり、照明・スペース・設備がさまざまであり、かつ限られている。

■機材・設備は持ち込んだものに限定される。

■最小限の人数で診療を行う。
■常に同じ診療室で治療を行うため、環境は一定。

■さまざまな治療に対応できるよう、多様な機材・設備が用意されている。

■歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付などが連携して診療を行う。

対象患者

訪問歯科診療では、患者様の緊急時対応や全身管理、服薬状況の把握など、より慎重な対応が求められます。

訪問歯科診療 外来歯科診療
■通院が困難な高齢者や障碍を持つ患者様が中心。

■全身状態を考慮した治療計画が必要とされる。
■比較的状態が安定しており、自ら来院可能な患者様が多い。

患者情報

訪問歯科診療では、情報収集の難しさや関係機関との連携不足から、必要な情報が得られず適切な対応が遅れる可能性があります。

訪問歯科診療 外来歯科診療
■医療機関や介護サービスとの連携が必須。

■情報共有システムの導入など、円滑な情報伝達が必要。

■カルテ情報に加え、生活環境・家族構成などを事前に把握する必要がある。
■患者様から直接情報を得ることができる。

■電子カルテの利用により、患者情報の一元管理や院内での情報共有がスムーズに行える。

関係者とのコミュニケーション

訪問歯科診療では、多様な関係者とのコミュニケーションが不可欠です。情報共有を密に行い、治療方針について十分な説明と意思確認を行うことが重要です。

訪問歯科診療 外来歯科診療
■患者様本人以外に、ご家族・施設スタッフ・介護スタッフ・医療機関など、関わる人が多い。ケアマネージャーとの連携が重要。

■情報共有システムの導入など、円滑な情報伝達が必要。
■関わる人は、患者様本人とご家族など比較的少ない。

■その場で状態や治療方針を説明できるため、相互理解が得やすい。

移動

訪問歯科診療では、移動に伴うリスク管理が必要です。時間的制約も考慮し、余裕を持ったスケジュール管理や随時の連絡調整を行うことが求められます。

訪問歯科診療 外来歯科診療
■歯科医師や歯科衛生士などが患者様宅や施設に訪問する。

■道路状況・天候・駐車場の問題で時間通りに診療できない場合や交通事故のリスクがある。
■患者様が来院する。

■患者様の来院遅延は診療に影響する可能性はあるものの、医院側の責任はない。

スタッフの不安

訪問歯科診療では、スタッフの負担軽減やメンタルヘルス対策、スキルアップのための研修などが重要です。

訪問歯科診療 外来歯科診療
■高齢者や障碍を持つ患者様への歯科治療・口腔ケアには、専門知識・技術が必要。

■外来とは異なる環境での診療や関係者対応、移動など、肉体的・精神的負担が大きい。
■歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフなど、役割分担が明確であるため、比較的負担が少ない。

まとめ

このように、訪問歯科診療は、外来診療に比べて、予測不能な事態が発生しやすいため、ヒヤリハットのリスクが高い傾向にあります。
しかし、これらのリスクを理解し、しっかりと対策を講じることで、安全な訪問歯科診療を提供することができます
デンタルサポートでは、これらの課題を解決するための各種支援を行なっています。
環境整備のためのアドバイスや効果的な情報共有システムの導入サポート、そして緊急時対応マニュアルの作成支援を通じて、より安全で効率的な訪問歯科診療を実現するお手伝いをさせていただきます。
訪問歯科診療に関するお悩みやご相談は、お気軽にお問い合わせください。

次回(2025年5月14日公開予定)は、訪問歯科診療におけるヒヤリハットの共有の重要性についてお話しします。


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