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訪問歯科診療 公開日:2025/10/08

訪問歯科診療の安定運営の鍵 ~感染症流行期の訪問中断を乗り越える方法~

訪問歯科診療の安定運営の鍵 ~感染症流行期の訪問中断を乗り越える方法~

こんにちは。デンタルサポート訪問サポート担当の野田です。
私は地方エリアでの現場サポートや訪問先営業など、訪問歯科診療の支援業務全般に携わっています。
訪問歯科診療に関するお悩みから問題点を分析し、課題解決のヒントをお伝えします。

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訪問歯科診療を行う歯科医院にとって、感染症の流行による訪問診療の中断は避けて通れない課題のひとつです。「明日からの訪問が中止に…」「再開の目処が立たないまま1か月が経過…」このような状況に、多くの歯科医院が直面したことがあるのではないでしょうか。

今回は、感染症の流行により診療中断となった際に、歯科医院としてどのような対応を取るべきか、具体的な対応策をご紹介します。

訪問歯科診療における診療中断のリスク

訪問歯科診療では、施設の事情によって、診療が急にキャンセルされることがあります。
たとえば、インフルエンザや新型コロナウイルス、ノロウイルスといった感染症が集団で発生した場合や、災害などの緊急事態によって一時的に施設が閉鎖される場合などです。
特に冬季は、感染症の流行により施設が外部との接触制限や閉鎖措置を取ることは珍しくありません。こうした不測の事態は、診療計画だけでなく、医院の収益やスタッフの稼働にも大きな影響を及ぼします。
しかし、多くの医院では、こうした事態への具体的な対応策が十分に確立されていません。そのため、突然の診療中断が発生すると、次のような問題が起こりやすくなります。

診療中断がもたらす影響
  • 診療収入の減少
  • スタッフの稼働率低下と人件費の非効率化
  • 患者様の継続的な口腔管理の中断
  • 協力歯科医院を変更されるリスク(患者が他院へ流出するリスク)

突然の診療中断への3つの対応策

ここでは、感染症流行期における突然の診療キャンセルに対し、具体的な備えと対応策を解説します。

➀スケジュール調整と連携による診療機会の確保

急な診療キャンセルに直面した際は、まずスケジュール調整を検討します。複数の施設や在宅患者に定期的に訪問している場合は、それぞれの訪問先と連携し、訪問日や頻度の調整が可能か相談してみましょう。

対応策の例
  1. 訪問スケジュールの調整
    • ・少人数の施設や状態の安定している在宅患者の訪問日を空いた日時に移動する。
  2. 訪問頻度の一時的な増加
    • ・通常は月1回訪問している施設に対し、一時的に月2回訪問できないか施設側と交渉する。
  3. 緊急性の高い患者への対応
    • ・緊急性の高い患者だけでも、可能な範囲で受け入れてもらえないか相談する。
Point!

効果的な調整を行うには、日頃から各訪問先と良好な関係を築いておくことが重要です。
スケジュール調整の依頼の際は、「患者様の継続的な口腔ケアのため」という医療的な観点から説明すると、施設側の理解を得やすくなります。

➁空いた時間の戦略的活用

休診によって生まれた時間を「診療の質の向上」や「組織力の強化」、「スタッフの知識・スキル向上」に役立てる貴重な機会と捉え、以下のような活動に有効活用しましょう。

対応策の例
  1. 診療の質向上
    ・普段、時間をかけられない患者様の診療をじっくりと行う。
    ・スケジュールや訪問頻度の変更に対応してくれた施設での診療時間を十分に確保する。
  2. 組織力強化
    ・スタッフ間の情報共有や症例検討会(ケースカンファレンス)を実施する。
    ・診療記録や報告書を整理・見直す。
  3. スタッフの知識・スキル向上
    ・訪問歯科診療に関する勉強会や各種研修に参加する。
    ・訪問診療マニュアルや院内ルールを見直し・改善する。
    ・訪問準備や医療機器の点検・整備を行う。
Point!

積極的な時間の活用により、スタッフのスキル向上や業務の効率化が進み、結果として再開後の診療がよりスムーズになり、患者様の満足度向上にもつながります。

③訪問先との関係維持のためのコミュニケーション

施設から「再開の際はこちらからご連絡します」と伝えられた場合でも、連絡を待つだけでなく、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
受け身の姿勢では、診療再開が大幅に遅れたり、協力医院を他院に切り替えられたりするリスクがあります。

効果的なコミュニケーションの例
  1. 定期的な状況確認
    • ・週1回を目安に連絡し、「診療計画作成のため」などを理由に前向きな姿勢を伝える。
  2. 施設への配慮
    • ・感染状況や職員の業務状況を気遣い、簡潔で要点を押さえた連絡を心掛ける。
  3. 明確な連絡計画
    • ・次回の連絡日を具体的に伝え、複数の連絡手段(電話、FAX、メール等)を活用する。
Point!

定期的なコミュニケーションには「再開確認」以上の価値があります。施設との信頼関係が強化され、患者様の口腔内状況を間接的に把握できる他、他院への切り替えリスクの低減にもつながる重要な活動です。

危機管理体制の構築

ここまで取り上げてきた対応策は、中断が発生した後に行う対処が中心でした。しかし、本来は事前に備えることの方が重要です。
あらかじめ危機管理体制を整えておけば、中断が発生した場合でも、その影響を最小限に抑えられます。

診療中断リスクを防ぐための予防策
  1. 訪問先の多様化
    • ・単一の施設に依存するのではなく、在宅の患者様や複数の小規模施設などを含め、訪問先を分散させる。
  2. 感染対策の徹底とわかりやすい説明
    • ・診療時に実施している感染対策の内容を施設側に明確に伝える。
  3. 他院への切り替えリスクへの対応
    • ・施設が閉鎖措置を取っている場合でも、定期的に連絡し、また感染対策の詳細な情報を継続的に提供する。
    • ・施設側が「連絡が取りにくい」「感染対策が不十分なのではないか」と感じないように、積極的にコミュニケーションを図る。
Point!

危機管理体制の構築は、単に感染症流行期の対応だけでなく、医院全体の事業継続性を高める重要な取り組みです。日頃からの準備が、いざという時の迅速な対応と信頼関係の維持につながります。

訪問歯科診療の安定運営に向けて

感染症流行などによる訪問診療の中断は避けられない課題です。
しかし、適切な準備と対応を行えば、その影響を最小限に抑えることができます。
また、空いた時間を有効に使って診療体制や組織力の見直しをすることで、診療の質を高めることも可能です。

感染症流行期の訪問中断を乗り越える方法
  • 1
    他の訪問先との連携し柔軟にスケジュールを調整する
    訪問先の分散化と柔軟な日程変更を行う。
  • 2
    空いた時間を戦略的に活用する
    診療の質や組織力、スタッフの知識・スキル向上のために時間を積極的に使う。
  • 3
    訪問先と適切にコミュニケーションをとり、良好な関係を維持する
    週1回程度の定期連絡と状況に応じた効果的な情報提供を行う。
  • 4
    危機管理体制の構築
    訪問先を分散し、感染対策の徹底や施設との関係維持に注力することで、中断リスクを最小限に抑える。

まとめ

これらの対応策を実践することで、一時的な診療中断を乗り越え、長期的にも安定的で柔軟に対応できる訪問診療体制を築くことができます。
訪問歯科診療の健全な運営を実現するには、「リスクへの備え」と「機会の活用」をバランスよく進め、持続可能な仕組みを構築することが重要です。

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