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訪問歯科診療 公開日:2025/09/24

【連載:訪問歯科における医療事故・トラブルへの対応】トラブルを防ぐ『人の力』~スタッフ教育とチーム連携の極意~

【連載:訪問歯科における医療事故・トラブルへの対応】トラブルを防ぐ『人の力』~スタッフ教育とチーム連携の極意~

こんにちは。デンタルサポート歯科事業部の萩原です。
訪問歯科診療サポート歴20年。現場サポート、介護施設などへの営業経験を活かし、「訪問歯科を”地域に必要とされる診療”として根付かせる」ことを目標に支援を提供しています。

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第4回目となる今回は、これまでのテーマを支える最後のピースとして、『スタッフ教育』と『チーム連携』に焦点を当てます。
単なるスキルの習得にとどまらず、「どうすればスタッフ一人ひとりが力を発揮できる組織を作れるのか」という視点から、訪問診療の質を高めるための方法をご説明します。

人的要因によるトラブルはなぜ起きるのか—多くの医院が直面する3つの課題

訪問歯科の現場は毎回状況が異なるため、チームには状況に応じて柔軟に対応できる力が求められます。
訪問歯科診療の現場で発生するトラブルは、機材や設備の不備が原因の場合もありますが、多くはスタッフの判断ミスや行動ミスによって起こっています。これらのトラブルの背景には、【情報不足】【教育不足】【役割の不明確さ】という3つの課題があります。

▶ トラブル事例

機材が揃っていても、誰が何を担当するのかが曖昧な場合、わずかなトラブルがきっかけとなって診療が中断してしまうことがあります。

  • 施設職員からの申し送りを受け忘れ、患者様の体調変化に気付かないまま、処置を行なった。【情報不足】
  • 新人スタッフが機材準備を誤り、診療が予定より遅れてしまった。【教育不足】
  • 歯科医師と歯科衛生士の作業分担が曖昧で、処置が重複したり、逆に必要な処置が抜け落ちたりすることがあった。【役割の不明確さ】
Point!

訪問チーム内で認識にズレが生じていたり、準備が不十分だったりすると、トラブルが起こりやすくなります。さらに、その問題解決も難しくなり、最悪の場合には診療が中断することもあります。
こうしたトラブルを未然に防ぎ、診療の質や効率を高めるには、環境や道具を整えるだけでなく、チーム内での役割分担や連携を明確にすることが不可欠です。

トラブル防止と収益アップを実現するスタッフ教育3つの柱

① 基礎知識と現場ルールの統一

訪問歯科診療には、外来診療とは異なる特有の準備やマナーがあります。
新人スタッフには、まず「訪問歯科診療専用の機材準備リスト」「施設訪問時の動き方」「患者様やご家族への声かけの基本」などを全員が共通して身につけられるよう教育します。

② ロールプレイ研修

診療手技や機材準備だけでなく、施設職員への挨拶や報告の仕方まで練習します。スタッフ同士が交代で患者様役と施設職員役を務め、実際の訪問に近い状況を何度も繰り返すことで、言葉遣いや対応のぎこちなさをあらかじめ解消できます。
また、訪問歯科診療でよくある質問とその答えをあらかじめ用意しておくと、現場で慌てずに対応できます。さらに、スタッフ間で説明内容を統一でき、スタッフ自身の理解も深まります。(例:歯科治療で医療保険だけでなく介護保険も適用になるのはなぜですか?など)

③ フィードバック文化の定着

トラブルやヒヤリハットがあった場合には、単に注意するだけで終わらせず、どのように改善できるかをチームで共有します。
たとえば、「機材準備が少し遅れたので、次回はこの順番で収納するとスムーズに取り出せると思います」といった前向きな提案が重要です。

Point!

ネガティブな指摘ではなく、前向きな提案を重視することで、スタッフのモチベーションやチームワークの向上が期待できます。また、些細なことでもチームで共有することで、全体のレベルアップにつながります。

診療効率を向上させるチーム連携強化の4ステップ

➀スタッフの役割を明確化する

診療日ごとに「機材管理担当」「記録担当」「施設連絡担当」などを明示します。
たとえば、臨時スタッフや新人が加わる日は、役割表を紙やホワイトボード、あるいは共有アプリなどで周知すると、混乱が少なくなります。

➁申し送りのテンプレートを作る

「体調」「当日の治療内容」「次回予定」など、必要項目をテンプレート化して記録します。記録フォーマットを統一することで、忙しい現場でも伝え漏れを防ぐことができ、スタッフ間の情報共有も効率化されます。

③定期ミーティングの議題にする

定期的に月1回程度、全スタッフが集まって短時間(15~30分)のミーティングを行います。その際に、トラブルやヒヤリハットの事例も全員で共有します。

▶ 定期ミーティングの議題の例

  • 発生したトラブルと解決策
  • 患者様・施設からのフィードバックの共有
  • 改善・効率化した新しいルールの共有

日々の感謝を言葉にす

「ありがとう」「助かりました」という言葉は、チームの空気をやわらかくします。
たとえば、「機材の準備、早くて助かりました」「患者様への説明がとてもわかりやすかったです」など、具体的な行動を挙げて感謝すると人間関係をよくするにも効果的です。

Point!

訪問診療は少人数で行うことが多いため、信頼関係がチームワークや診療の効率に大きく影響します。実際に、チーム内で肯定的なコミュニケーションが多い医院では、スタッフの定着率や患者様の満足度が高まる傾向があります。

事例から学ぶ:人の力でゼロトラブルと収益アップを実現

サポート事例

▶ 東京都のB歯科医院の場合

B歯科医院では、新人歯科衛生士2名の採用後、機材の忘れ物や申し送り漏れが増加し、月に1件以上のトラブルが発生するようになりました。そのため、医院は取引先の施設から徐々に信頼を失い始めました。

▶デンタルサポートの3つの提案

そこで、当社は次の3つの対策を提案しました。

  1. 「医院ルール」を作成すること
  2. 訪問歯科診療マニュアルを導入すること
  3. スタッフ全員がデンタルサポートの勉強会を受けること

▶ 実施の成果

これらの対策を実施した結果、3か月後にはミスが大幅に減少し、施設からは「安心して任せられる」と高く評価されました。また、診療の効率も向上したため、月間の訪問件数や収益も増加しました。
院長先生からは「スタッフが自信を持って働けるようになり、患者様への対応も良くなりました。コンサルティングの効果は予想以上でした」とのお言葉をいただきました。

Point!

このような変化が起きたのは、単に訪問歯科診療の知識を得たからだけではありません。スタッフ全員が共通の目的意識を持ち、互いに支え合う職場文化がしっかりと根付いたことが大きな要因です。

まとめ—今日から始められる改善策

訪問歯科診療の安全と信頼は、体制、信頼関係、環境に加え、『人材の力』で完成します。
今回ご紹介した方法の中から、まず以下の点から実践してみてください。

4つの改善策
  • 1 基礎知識と現場ルールをスタッフ全員で統一する
  • 2 実践的なロールプレイでスタッフの現場対応力を鍛える
  • 3 前向きなフィードバックによって改善文化を根付かせる
  • 4 明確な役割分担と情報共有でチームを一つにする

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