Column
コラム
こんにちは。デンタルサポート歯科事業部の萩原です。
訪問歯科診療サポート歴20年。現場サポート、介護施設などへの営業経験を活かし、「訪問歯科を”地域に必要とされる診療”として根付かせる」ことを目標に支援を提供しています。
「説明したつもりなのに、なぜか家族から不満の声が」「施設との連携がうまくいかず、診療がスムーズに進まない」「認知症の患者様に拒否されてしまい、診療を中断せざるを得なかった」訪問歯科診療に携わる先生方は、こうした悩みを一度は経験されているのではないでしょうか。高度な歯科医療技術があっても、コミュニケーションの壁に直面することは少なくありません。
本連載「訪問歯科における医療事故・トラブルへの対応」では、訪問歯科診療で起こりうるさまざまなトラブルへの対応策と未然に防ぐための実践的なノウハウを提供しています。
第二回となる今回は、患者様・ご家族・施設職員との信頼関係を構築するコミュニケーション術を解説します。このコラムを読むことで、明日からすぐに実践できる対話のポイントを習得し、トラブルを未然に防ぎながら「またあの先生に来てほしい」と信頼される歯科医院を目指す第一歩を踏み出せます。
目次
訪問歯科診療は、通院が困難な高齢者や障がいのある方々へ歯科医療を提供する重要な役割を担っています。その現場では、患者様ご本人だけでなく、ご家族や施設職員との連携が不可欠です。
訪問歯科診療の現場では、コミュニケーション不足による小さな誤解が、患者様の信頼を損ね、診療拒否やクレームにつながることがあります。こうしたトラブルは、診療の質だけでなく、医院の評判や経営にも悪影響を及ぼす重大な問題です。
ここでは、多くの歯科医院から相談を受けた実際の事例をもとに、コミュニケーション不足によって起こりうるトラブルとその対策について解説します。
義歯の調整を繰り返していたが改善が見られず、ご家族から「いつまで続けるのか」「他の治療法はないのか」と不満の声が上がった事例。
■原因
■対策
患者様が当日体調不良であったにもかかわらず、施設側から事前の申し送りがなかった。さらに、歯科医院スタッフが体調の確認もせずに診療を開始してしまった。診療後に施設側から「今日は無理して欲しくなかった」との指摘を受け、関係性がぎくしゃくした事例。
■原因
■対策
認知症の患者様に対して「今から歯を削りますね」と伝えたところ、強く拒否されて診療が中断した事例。
■原因
言葉の選び方:患者様に恐怖心を与える言葉(削る)を使っていた。
配慮不足:患者様の心理状態への配慮が足りなかった。
■対策
声かけの工夫:患者様が不安や恐怖を感じやすい言葉(削る、抜く、刺すなど)は使わず、「悪くなっている部分を取り除いていきますね」など、安心感を与える表現を用い、やさしい口調を心がける。
非言語的コミュニケーション:目線の高さを合わせるなど、患者様に寄り添う姿勢を心がける。
信頼関係を築くには、「小さな積み重ね」が大切です。以下の3つの視点を意識しましょう。
話の途中で口を挟まず、相手の言葉にしっかり耳を傾けることで、「理解しようとしている」という姿勢が相手に伝わります。訪問される患者様の中には、うまく言葉にできなくても、一生懸命伝えようとしてくださる方も多くいらっしゃいます。内容がわかりにくい場合でも、まずは最後までしっかりとお話を聴くことを心がけましょう。
※ゆっくりお話を伺っても、うまく聞き取れない場合もあります。そのようなときは、ご家族や看護師、介護スタッフの方にも声をかけて、一緒にお話を伺ったり、相談したりすることをおすすめします。
共感の言葉をかけることで、診療がスムーズに進むことも多くあります。
表情、声のトーン、姿勢などを含めた「伝え方」が、相手に与える印象を大きく左右します。
訪問歯科診療で役立つ、基本的かつ効果的な5つのテクニックをご紹介します。
うなずきや相づちを交えながら相手の話を聴き、共感や理解の姿勢を見せる。
(例: 「なるほど」「そうなんですね」「それは辛かったですよね」)
自分の考えを押し付けずに伝える方法です。対立を避けながら話し合いができるようになります。
(例: 「私は〇〇と考えますが、〇〇さんはどう思われますか?」)
相手の発言を言い換えて返すことで、理解していることを示します。相手が「分かってもらえた」と感じやすくなります。
(例: 「〇〇なんですね。つまり、□□ということですね?」)
専門用語は避けて、短く具体的に伝えましょう。特にご家族や施設職員には、「目的」「方法」「見通し」の順で説明すると、より理解してもらいやすくなります。
患者様のお名前をお呼びすることが、信頼関係を築くうえでとても大切なのは言うまでもありません。それと同じように、担当者の方のお名前を呼ぶことも重要です。挨拶や声をかけるときには、まず相手のお名前を呼ぶように意識しましょう。そうすることで、親しみやすい雰囲気が生まれ、相手にもこちらの名前を覚えてもらいやすくなります。特に訪問歯科の担当者に声をかける際は、「○○さん」とお名前を呼ぶことを心がけてください。
訪問歯科診療において、診療の質と同等に大切なのが”対話の質”です。診療が終わったあとに「丁寧に説明してくれて安心した」「話をよく聴いてくれた」と感じてもらえるかどうかが、継続的な信頼関係構築の鍵となります。
とはいえ、忙しい現場で常に丁寧な対応を心がけるのは簡単ではありません。だからこそ、医院全体でコミュニケーションを「個人のセンス」に頼るのではなく、「スキル」として体系的にみがいていくことが重要です。
A歯科医院では、訪問歯科診療を始める際、患者様ご本人とのやり取りだけで業務が完結すると考えており、ご家族や施設職員など、患者様以外の方とのコミュニケーションの重要性を十分に認識していませんでした。
当社の研修を受けたことで、ご家族や施設職員との連携の重要性に気づき、訪問診療の開始直後から積極的に実践されるようになりました。その結果、現在では患者様以外の関係者ともコミュニケーションが取れ、良好な関係を築いています。
私たちデンタルサポートでは、25年以上の訪問歯科診療サポート実績に基づき、『訪問歯科診療勉強会 対応編』というスタッフ研修を承っております。また、講義だけでなく実際に訪問現場へ同行し、その施設・患者様に合わせたアドバイスを提供しています。
「患者様やご家族との関係づくりに悩んでいる」「施設職員との連携をもっとスムーズにしたい」「スタッフのコミュニケーションスキルにばらつきがある」などのお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。
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