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採用・求人 公開日:2025/10/21

最低賃金+63円時代に歯科経営者が今すぐやるべき5つの実践戦略

最低賃金+63円時代に歯科経営者が今すぐやるべき5つの実践戦略

こんにちは。デンタルサポートの「歯科採用職人」こと石田です。

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毎年この時期になると「最低賃金の改定」が話題にあがります。
最低賃金の引き上げは、歯科医院の経営と採用にダイレクトな影響を与える重要なテーマです。 今回は、できる限りわかりやすく「雇用主は何に気をつけて、何をすべきか」を整理し、具体的な対策をご紹介します。

最低賃金改定の基本知識

「最低賃金」とは、「この金額より安い給料で働かせてはならない」という法律上のルールです。雇用主は最低賃金以上の賃金を支払う必要があり、違反した場合は罰則があります。

最低賃金改定の3つのポイント
1.
都道府県ごとに金額が異なる
同じ関東地方でも東京都(1,226円)と茨城県(1,074円)では最低賃金に100円以上の差があります。

また、従業員の最低賃金は、住んでいる場所ではなく、勤務先がある都道府県で定められている金額が適用されます。
たとえば、東京都に住んでいる人が千葉県の歯科医院で働く場合は、千葉県の最低賃金が適用されます。

2.
毎年ほぼ必ず上がる
過去10年間を振り返ると、平均して毎年20~30円の上昇が続いてきましたが、直近2年間は40~60円の大幅な上昇となっています。

3.
正社員もパートも一律で適用される
「月給制のスタッフだから関係ない」は誤解です。
月給(基本給と毎月一定の手当の合計額)を所定労働時間で割って時給に換算し、その金額が最低賃金を下回る場合は法令違反となります。
また、加算される手当と加算されない手当があるので注意しましょう。

詳細は、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

最新の最低賃金改定状況

物価の上昇に対応して国民の生活水準を保つため、政府は最低賃金の全国平均を1,500円とする目標を掲げています(経済財政運営と改革の基本方針2025)。
厚生労働省が2025年8月4日に公表した最低賃金の改定目安では、全国平均で+63円(前年比+5.9%)と、統計を取り始めて以来の最高額となりました。最も高い最低賃金は東京都の1,226円となり、また、上げ幅が大きかったのは熊本県の+82円(+8.6%)でした。

最低賃金の発効時期は地域ごとに異なります。東京都と千葉県では最も早く、2025年10月3日に適用されます。その他の道府県では、2026年3月31日までに順次発効する予定です。

詳細は、厚生労働省が公表している「地域別最低賃金 全国一覧」(PDF)をご参照ください。各都道府県の最新の最低賃金額や発効日などの情報が掲載されています。

医院経営への直接的影響

「ウチはスタッフ全員すでに1,250円超の時給だから影響なし」と安心するのはまだ早いでしょう。なぜなら、最低賃金が上がると、近隣の歯科医院や小売業・サービス業などの人材獲得の競合先でも「底上げ」を迫られ、結果的に地域全体の賃金相場が引き上げられるためです。

最低賃金上昇で歯科医院に起こる5つの影響
1.
直接人件費アップ
歯科助手・受付・事務・クリーンスタッフなど「資格が不要な職種」が時給アップを迫られ経営を直撃します。

▶試算例
時給上昇額:+50円
対象者:3名(資格不要職種のスタッフ)
勤務時間:8時間/日×20日/月
影響額:50円×8時間×20日×3名=24,000円/月増 ⇒年間 約29万円の人件費増加となります。
2.
賃金テーブル全体のドミノ調整
最低賃金の引き上げによって、現在のスタッフと新人が同等の時給になるという状況が生じます。その結果、スタッフの間に不公平感が生まれることがあります。

こうした不満を防ぐためには、中堅やリーダー層の時給も合わせて引き上げる必要が出てきます。そのため、職場全体の人件費を大きく増加させる要因となります。

3.
採用競争の激化
小売業やサービス業などの採用競合先が素早く時給を上げると、「歯科助手より楽で時給が高い」と考えた求職者が歯科医院を避けて異業種へ流れる現象が起こります。

さらに深刻なのは、このような状況に気付いてから時給を上げても、多くの場合、すでに採用のタイミングを逃していることです。

4.
スタッフ疲弊による離職連鎖
新規採用を抑制し既存メンバーで業務を回そうとすると、一人あたりの業務量が急増します。

「他院や他業種の方が条件が良い」「スタッフが減って以前より忙しいのに給料が見合わない」と感じたスタッフから順に退職を検討し始め、離職の連鎖につながるリスクがあります。

5.
医院間の格差拡大
都市部の大型医院や自費診療中心の医院は収益力があり人件費上昇に対応しやすい一方、地方の保険診療主体の中小規模医院では賃金アップ分を売上に即転嫁するのが難しい状況です。

5つの実践戦略

人件費高騰に対応し、採用を成功させるには戦略的な取り組みが不可欠です。ここでは、実践可能な5つの戦略をご紹介します。

(1) 生産性向上ツールの段階的導入

下記のようなツールを導入することで、少人数のスタッフでも生産性を高められ、一人当たりの売上の増加や業務時間の短縮が期待できます。

1.
WEB予約システムの導入
電話対応業務を削減でき、受付スタッフの負担軽減できます。また、患者様の24時間予約が可能になります。
2.
自動精算機の設置
釣銭間違いなどのヒューマンエラーを防止できるうえに、1日の会計締め作業も大幅に短縮できます。
3.
ホワイトニング照射器の複数台導入
複数患者の同時施術が可能となり、ユニット稼働率と売上効率を大幅に向上させることができます。
ポイント!

一度にすべてを導入するとキャッシュフローに負担がかかるため、費用効果が高いものから優先的に検討しましょう。

(2) 一人多役のスタッフ育成とキャリアパスの可視化

歯科助手としてスタートしたスタッフは、さまざまなスキルを身につけることで活躍の場を大きく広げられます。たとえば──

1.
トリートメントコーディネーター
自由診療のメリットを理解し、患者さんへのカウンセリング力を磨けば「トリートメントコーディネーター」に。
2.
医療事務スペシャリスト
レセプト処理の知識を深めれば「医療事務」のスペシャリストに。
3.
採用・研修担当
採用や教育のノウハウを学べば「採用・研修担当」として組織づくりに貢献。
ポイント!

このように、一人ひとりが“歯科助手+α”の役割を持つことで、多彩なキャリアパスを描けます。

(3) 補助金・助成金を活用した設備投資

設備投資や人材育成に活用できる公的支援制度の活用を検討しましょう。

1.
キャリアアップ助成金
2.
業務改善助成金(設備投資)
3.
IT導入補助金(POS・自動釣銭機など)
ポイント!

これらの補助金や助成金は申請期限や予算枠に限りがあるため、早めに情報を集めて計画的に申請することが重要です。

(4) 院内コミュニケーションの質向上によるスタッフ定着

賃金だけでなく「居心地の良さ」も重要な定着要因です。

1.
朝礼や夕礼などでの発言機会の確保
朝礼でスタッフが意見や提案を自由に発言できる場を設け、全員参加の医院運営を実感できるようにします。
2.
定期的な1on1面談の実施
定期的に15分程度のカジュアルな個別面談で、業務や個人的な悩みを聞き、信頼関係を構築します。
3.
スタッフ満足度調査の定期実施
半年に1回程度の匿名アンケートで、表面化しにくい問題点や改善要望を把握し、職場環境を改善します。
ポイント!

これらの取り組みにより、スタッフの不満や改善要望を早期に発見し、対応することで離職の連鎖を防止できます。
また、「自分の声が届く職場」という安心感がスタッフの信頼関係向上につながり、長期的な定着に効果を発揮します。

※上の2.面談、3.スタッフ満足度調査は外部に委託して、体制を構築するのもオススメです。

(5)「働きやすさ」の見える化で求人票の差別化

時給だけで人材を獲得するのは困難です。他院と差をつけるためには、「働きやすさ」を具体的にアピールすることが重要です。

1.
柔軟なシフト体制
週休2.5日制や17時半退勤可能など、ワークライフバランスを重視したシフト体制を明示し、応募者の関心を高めます。
2.
ライフイベント支援
産休・育休からの復帰率や時短正社員制度の利用実績など、長期的なキャリア構築をサポートする制度をアピールします。
3.
スキルアップ支援
外部セミナー費用の全額補助や資格取得祝い金など、専門性向上を経済的に支援する制度を具体的に提示します。
ポイント!

実際の取り組みを数値や実績で示すことで、応募者からの信頼を獲得できます。

まとめ:最低賃金上昇を経営強化のチャンスに

最低賃金の上昇は確かに医院経営を圧迫しますが、見方を変えれば、医院の体質を強化する絶好のチャンスでもあります。

  • 業務の無駄を洗い出し、効率化を進める
  • スキルの高い人材が長く活躍できる環境を整備する
  • 自費診療やメンテナンス中心の「選ばれる医院」へとシフトする

これらの取り組みは短期的には負担に感じるかもしれませんが、中長期的には患者満足度の向上や経営の安定につながる重要な投資といえます。

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